閑話-1 PCで音質の良い音楽を聴くために

パソコンには、デジタル信号をアナログ信号に変換して出力する回路(DAC:Digital to Analog Converter, DA変換回路)が搭載されています。通常は、そのDACで変換された信号を内蔵スピーカーやイヤホン・ヘッドホンを通じて再生します。したがって、音質はDACの性能、アナログ回路の設計、さらにスピーカーやヘッドホン自体の品質によって大きく左右されます。

Macは比較的高品質なDACを内蔵しているため、そのままでも実用的な音質を得やすい傾向があります(設定を適切に行えばさらに改善可能です)。一方、Windows搭載機は機種間の差が大きく、一般には内蔵DACやアナログ回路が簡易的に設計されている場合も多いため、音楽鑑賞用としては十分とは言えないことがあります。そのため、外部DACやオーディオインターフェースを導入するか、ファイルをダウンロードして高品質なソフトウェアプレイヤーで再生することを推奨します。

外部DAC・オーディオインターフェースの利用
高音質を得る最も確実な方法は、PC内部のDACを使わずに、外部DACやオーディオインターフェースを利用することです。これらの装置は音楽再生専用に設計されており、以下のような点で優れています:

サンプリングレート(Sampling Rate)
一般的なCD音源は44.1kHzですが、ハイレゾ音源では96kHzや192kHzに対応するDACが用いられます。サンプリングレートが高いほど、アナログ波形に近い再現が可能です。

ビット深度(Bit Depth)
CDは16bitですが、24bitや32bitに対応するDACもあります。ビット深度が大きいほどダイナミックレンジ(最小音量から最大音量までの幅)が広がり、繊細な音も再現しやすくなります。

ジッター(Jitter)とクロック精度
デジタル信号をアナログに変換する際、クロック信号の揺らぎ(ジッター)が大きいと音がにごったり、定位が不安定になったりします。高品質なDACやオーディオインターフェースは高精度クロックを搭載し、ジッターを極力抑えています。

アナログ回路設計
DACの後段にあるオペアンプやフィルタ回路の設計品質も音質に大きく影響します。外部DACはここに高品質な部品を採用するため、より自然でクリアな音を実現します。

私自身は、Steinberg(ヤマハ子会社)のオーディオインターフェース UR-22 を現在も使用しています。古いモデルですが、24bit/192kHzに対応し、ジッターも十分に抑えられているため音楽鑑賞用途には十分です。私はMIDI入力も利用するためUR-22を選んでいますが、純粋にリスニング用途であれば、よりシンプルで安価なUSB-DACで問題ありません。

なお、室内で腰を据えて聴く場合はイヤホンよりもヘッドホンやスピーカーの方が音場の広がりを感じやすく適しています。私はモニター用途として、AKG製ヘッドホン K712 Pro を使用しています。これはオープン型で、音の分離や定位が良いため長時間のリスニングにも向いています。

HDMIによる出力
もう一つの方法は、HDMIケーブルでPCとテレビを接続することです。この場合、テレビをPCのサブディスプレイとして利用すると同時に、テレビ内蔵の高音質スピーカーをそのまま使うことができます。ただし、PCとテレビの解像度が一致しない場合は、PC側の設定でテレビのネイティブ解像度に近い値を選ぶ必要があります。

まとめ
・音質は DACの性能・ジッター抑制・アナログ回路の設計 に大きく依存する。
・外部DAC/オーディオインターフェース を利用することで音質改善が容易。
・高リスニング環境によっては、イヤホンよりも ヘッドホンやスピーカー が適している級機でなくても、24bit/96kHz程度対応の製品で十分に高音質を